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2011-06-09 22:41:59 0 Comments
前々回に引き続き中部大学の武田先生のホームページから
貼らせて頂きます。
以下完コピです。
原発事故中間まとめ(4) 「悪意」か? 私たちの政府
3月11日、福島原発が時々刻々、破壊に向かっているとき、発電所と政府は共に国民に事実を知らせなかった。
1)
発電所長は消防に通報しなかった、
2)
政府は国民に危険を知らせなかった。
しかし、この二つならまだ「準備不足」とか、「普通に見られる隠蔽体質」とも言えるが、逃げる方向について政府が発表したとき、私は「まさか!」と耳を失った。
原子力の専門家ならすべての人が知っていることなので、「悪意」としか考えられないが、本当だろうか?
・・・・・・
「放射線」というのは「光」だから、自分の目で福島原発が見えなくなったら、「福島原発から直接来る放射線は来ない」。
だから「被曝する」のは「放射性チリ」からだ。
原発が爆発するとき、原発の建物は「天井方向に抜ける」ように設計されている.
これは爆発の可能性のある建物を設計するときの常道で、「爆発のエネルギーが原子炉や人のいる下の方に行かないように」という配慮である。
福島原発の水素爆発でも、屋根が抜けてまっすぐ上に100メートルほど煙(放射性チリ)が舞い上がった.
もし、そのまま無風の「状態」が続けば、吹き上がった放射性チリの「粒」はそよそよとそのまま原子炉建屋の中に帰って行っただろう.
でも、現実には無風の状態がそれほど長く続くわけではない.上空にまっすぐ上がった放射性チリは、風に流されて徐々に西北(一部は南)に向かった。
その時、政府は驚くべき発表をしたのである。それは、
「放射線の強さは距離の二乗に比例するので、遠くに逃げれば良い」
ということであり、それを受けてNHKのテレビでは東大教授が、
「10キロ地点から20キロ地点に逃げると、被曝量は4分の1になります」
と解説をしていた。「かけ算」をせずに1時間1ミリシーベルトを「レントゲンの600分の1」などと言っていた時代だ.
それを真に受けた多くの人たちは、
「原発から遠くに逃げろ」
と思ったのは当然である.
これほど簡単なことを間違えるはずはないから、どうも「悪意の政府」、「鬼の東大教授」のように見える。
なぜなら、「正しいことが判っていて、わざと国民がより多く被曝するように指導した」からだ。
原発の事故では「原発を背にして、遠くに逃げる」のはダメである。
この図を見て欲しい.
福島原発が爆発すると、そこからの放射性物質は風で流れる.どちらの方向でも同じだが、もし「西北」の方に流れたとしよう。
その時に、政府が「原発から遠ざかれ!」と言った。
国民はまさか政府が悪意を抱いているとは思わないので、原発を背にして逃げた。
でも、図のAさんは風下に当たっていたから、逃げれば逃げるほど原発から襲ってくる放射性物質の中にいた。事実、逃げたところで粒が上空から降ってきたので、もと居た場所より多く被曝した。
Bさんも、Cさんも風下には当たっていなかったので、逃げる必要はなかったが、政府を信じて逃げた。
そうして、Bさんは郡山まで逃げ、そこで迂回してきた放射性チリで被曝し、元のところの方が低かった。
・・・・・・・・・
つまり、
1)
風下に当たっている人は、原発から遠ざかれば遠ざかるほど、長時間被曝する、
2)
「横に」10キロも逃げれば、被曝しない.つまり「原発から遠ざかる」のではなく、直角に逃げろということだ、
3)
風下の当たっていない人は遠ざかっても関係がない、
ということが判る。
私が最初のころ、火山の噴煙の動きを貼りつけて「風下はダメだ」と言い、気象庁に「風の向きを予報してくれ!」と叫んだのはこのことだ。
気象庁は知らない顔をしていた。彼らも放射性チリの流れを知っていて、言わなかったのかも知れない.
・・・・・・・・・
もちろん、原子力安全委員会、原子力保安院は知っていた。専門家集団であり、普段から原発のシビアーアクシデント(大事故)を考えに考えているのだ。
こんなことを知らなければ職務が遂行できない.私は彼らが知っていたことを知っている。
ということは、国民がより多く被曝するように「放射線は半径の二乗で・・・」と言い、「遠ざかれ」と言ったと思わざるを得ない。
事実、それを信じた首長さんは住民を連れて原発から遠ざかろうとして、さらに被曝した。
何ということだろう!
万が一、今回の事故で病気の人がでたら、政府と安全委員会は「傷害罪」ではないか? あちらに逃げれば火傷をすると知っていて、その方向に逃げるように指示する人などいるだろうか?
何でこんなに大きな間違いをして、平気なのだろうか? 今からでも修正しておけば、今後も役立つのに、なぜ謝罪しないのだろうか?
・・・・・・
今回の事件は、多くの面で、「一体、政府とは何か?」、「知識とはなにか?」を訴えているように思える.
(平成23年6月9日 午前8時 執筆)
武田邦彦
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(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ
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